2012年5月31日木曜日

日米教育委員会 アメリカ留学の基礎知識(法律大学院)



「アメリカ留学の基礎知識(法科大学院)」は、アメリカのLaw School(法科大学院)への入学を希望する方々の為に書かれたものです。「アメリカ留学の基礎知識−大学・大学院」(またはアメリカ留学公式ガイドブック)と併せてご利用ください。

このページの目次


 1 はじめに
 2 留学生がLaw School(法科大学院)に留学するとき
   A 外国人留学生の受け入れ
   B 日米比較表-日米の教育制度・資格制度の違い
   C Law School入学に必要とされる資格・条件・適性能力
   D 奨学金
 3 アメリカのLawyerの資格制度と職業分野
   A 資格・免許制度
   B 職業分野
   C 外国人の受け入れ
 4 アメリカの法学教育
   A LLM
   B JD
   C SJD
   D その他のプログラム
 5 日本人留学生が留意すべき点
   A 動機・目的:なぜLaw Schoolに留学したいのか?
   B 大学選択(Law Schoolを選ぶとき)
   C 出願条件(学力、英語力、経済力、その他の能力)
   D 出願準備・時期
   E 留学後の進路・キャリア
 6 LLM以外のプログラムへの留学
 7 ロースクールに関する情報源


●1. はじめに

最近のアメリカ留学の状況をみると、留学者の多様化とともに留学先も多様かつ専門化が目立つようになりました。 なかでも大学院留学は特定の学問分野での勉学や研究を目的としますので、教育内容を充分に調べなければなりません。法学教育に関しては、アメリカでは学部課程ではなく、大学院レベルのLaw Schoolで行われています。Law Schoolは、3年間アメリカ法を学ぶJDプログラムと、1年で比較法や国際法を学ぶMaster of Laws (LL.M: Master of Laws/M.C.L.: Master of Comparative Law)プログラムに大別されます (アメリカの法学教育)。外国人留学生もLaw Schoolに入学出来ますが、実質はアメリカでMaster of Law (LL.M/M.C.L.)プログラムで学ぶことを目的とし、自国ですでに法学の学位や法律家としての資格を持つ人が殆どといわれています。

「アメリカ留学の基礎知識(法科大学院)」では、外国人留学生の大多数が目的としているMaster of Lawプログラム(LL.MやM.C.L.)への留学を主体にとりあげます。

●2. 留学生がLaw School留学するとき

A. 外国人留学生の受け入れ

前述したように、外国人留学生がLaw School留学する場合、アメリカ法をみっちりと学ぶ3年間のJDプログラムではなく、国際法や比較法を学ぶ1年間のLL.Mプログラムを選ぶ人が殆どといわれています。Law School留学というものが、実際は1年間のLL.Mプログラム留学であることが多いという事実をまずは知っておきましょう。アメリカの留学生統計(Open Doors 2008, IIE)によれば、法学(Legal Professions & Studies)を学ぶ留学生は6,598人(全体の1.2%)となっています。(国別の統計は発表されていません。)

アメリカで法律を勉強する利点として、よりよい弁護士になるためや、アメリカや自国で法学部の教授になることの他に、全ての法律に関連する事柄に有利に働くことがあるという点があります。(その他に挙げられることとして、法律学術書の出版、法律関連のインターンシップ、ビジネス社会でのネットワークの作成、法務省での勤務、裁判官になるためなどがあります。)

B. 日米比較表 − 日米の教育制度・資格制度の違い

日本からアメリカのLaw Schoolに留学する場合は、まず日米の法学教育や資格制度の違いを知り、日本での教育と比較して「何故アメリカのLaw Schoolに留学するのか」という留学の意義と将来展望を明確にすることが重要です。

ここでは日米の教育システム・資格制度の違いについて、比較表を使って説明しています。(アメリカの法学教育)。Law School留学の代名詞である、LL.Mに入学するためには、日本では学歴として法学士号(法学部卒業)が必要であることにご注意ください。
(他分野の学士号取得者でも、法律分野で十分な職業経験・実績がある場合、Law Schoolによっては、入学が認められる場合がある。詳細は、各Law Schoolに問い合わせること。)

☆日本の法学教育
日本の法学教育は、近年の司法制度改革により制度が変わりました。これまで、日本の法学教育は、高校卒業後、4年制大学の法学部で行われていましたが、2004年4月、新たに「法曹養成に特化した教育を行うプロフェッショナル・スクール」としての法科大学院が開設されました。

学士を得た後法律家になるためには、この法科大学院を卒業する必要があります。修業年限は原則として3年ですが、法学既習者については2年生の短縮コースが設けられています。法科大学院修了者には5年以内に3回までの新司法試験の受験資格が与えられます。新司法試験は2006年から実施されており、従来の司法試験は2010年まで受験することが可能です。(ただし、2010年に行われる論文式試験に合格して口述試験に不合格となった受験生を対象にして、口述試験のみが2011年に実施されます。旧司法試験合格後に司法修習が行われます。) また、法科大学院を修了しなくても、予備試験に合格すれば、新司法試験を受験することができます。予備試験ルートは2011年から実施されます。新司法試験に合格した後は、実務家の指導の下で新� �法修習を行い、考試と呼ばれる最終試験を合格して初めて法律家(法曹:弁護士、裁判官、検察官の三者)としての道が開かれます。 (参考:「弁護士になるには」日本弁護士連合会)

C. Law School入学に必要とされる資格・条件・適性能力

以下は、Law School入学に必要とされる一般的資格・条件、および適性能力(下記参照)です。入学条件に、就労経験を必須としている大学もあるといわれます。適性能力(下記参照)の詳細を見てみると、学業だけでなく就労経験がコアスキル習得に有効であり、また能力証明にも寄与していることは想像に難くありません。


先生を喜ばせる方法

・資格: 学士号を取得していること。(J.D.の場合、専攻は問われない。LL.Mの場合、留学生は法学の学士号)
・条件: 学力、およびコアスキル(下記参照)、英語力、経済力、エッセイ、推薦状、(時に)就労経験、LSATのスコア(J.D.の場合)
・適性能力(コアスキル):
Analytical/Problem-solving Skills, Critical Reading Skills, Oral Communication & Listening Abilities, Writing Skills, General Research Skills, Task Organization & Management Skills, The Value of Serving Others and Promoting Justice

D. 奨学金

アメリカの大学は潤沢な奨学金を出している、というイメージがあるかもしれません。しかし、残念ながら現実とは異なります。特に専門職養成大学院プログラム(Professional School)では、アカデミックな学術系大学院プログラムと異なり、大学院側から奨学金が出ているというケースはほとんどありません。日本国内の奨学金制度の利用を検討している方は、奨学金団体の多くが締め切りを渡米の1年前に設定しており、留学準備と同時進行で選抜が行われるところもあると理解し、とにかく早めに各奨学金団体の募集要項をチェックして申し込みましょう。その際、各団体毎に募集対象や条件が異なりますので、注意が必要です。(日本国内で公募されている奨学金 「アメリカ留学奨学金制度一覧」を参照。)

 

●3. アメリカのLawyerの資格制度と職業分野 *以下、アメリカの法律家をLawyerと記述します。

アメリカでLawyerとして活動するためには資格(免許)を取得しなければなりません。各州法によっても異なりますが、一般的には、ABA(American Bar Association:アメリカ法曹協会)認定のLaw School(J.D.プログラム)でJ.D.を取得した後、各州の司法試験 (Bar Examination) に合格し、法曹協会の登録 (Bar Admission) をして初めて法律分野の各種職業につくことが出来ます。

A. 資格・免許制度

Lawyerの資格・免許制度は各州によって定められています。すべてのLawyerは州の法曹協会に登録しなければなりません。登録の規則は州により異なりますが、一般的には次の3点が要求されます。  

1. ABA(アメリカ法曹協会)認定のLaw Schoolから学位(必ずしもJ.D.に限らない。州によってはLL.MでBar Examinationを受けられる場合あり)を取得のこと。  
2 . 州の法曹協会実施の司法試験 (Bar Examination) に合格のこと。  
3 . Lawyerとしての適性、法律倫理の理解、健全な人格の証明が出来ること。

司法試験の合格率は州によっても異なりますが、一般的に約70%(2007 Bar Admission Statistics, National Conference of Bar Examiners)で、ABA 認定校のJ.D.取得者はほとんどが数年の内に合格します。(LL.M.プログラムを修了した場合、Bar Examinationを受けることのできる州は限られる。)合格後、州の法曹協会で登録されれば、その州でLawyerとしての活動が出来ます。又、条件を満たしていれば、他州で活動することも出来ます。各州の詳しい規則や司法試験の内容については ABA 発行 Comprehensive Guide to Bar Admission Requirementsをご覧下さい。

B. 職業分野

Lawyerの資格(免許)を取得すると様々な分野で活動できます。就職の機会の多い順からみると、法律事務所の弁護士 (55.5%)、政府機関 (10.7%)、 政府司法機関 (9.8%)、民間機関・産業界 (14.1%)、公共サービス機関 (5.8%)、 大学・研究所 (1.8%)、軍 (1.0%)となっています。(出典:Class of 2007 Selected Findings , National Association for Law Placement) 職業の需要と供給は社会の変化に連動し、就職の機会も就職分野の関心も常に変動します。Law School入学、司法試験受験、Lawyerの就職などの状況はデータが公表されていますので、それらの資料を調べ、Lawyerの現状を把握しておくことが肝要です。

C. 外国人の受け入れ

アメリカでは外国籍の者でも教育を受け、条件を満たしていれば、各種資格を得ることが出来ます。Lawyerも例外ではありません。司法試験は殆どの州でアメリカ国籍を持っていなくても受験できます。その際、前述の通り(資格・免許制度)、アメリカのLaw Schoolのどの学位が要求されるかは、各州の規則により異なります ( ABA 発行 Comprehensive Guide to Bar Admission Requirements参照)。重要なことは、資格を取得しても、就職をする際、移民局の許可、つまり就労(H-1)ビザを取得しなければアメリカで働くことが出来ないということです。資格を得ることと、就労ビザを得ることは異なりますのでご注意下さい。

 

●4. アメリカの法学教育

アメリカの法学教育は、大学学部課程ではなく、Law Schoolと呼ばれる大学院レベルの法律家の専門職養成プログラム(Professional School)で行われています。Professional Schoolは、アメリカの中ではハードで厳しい実践家養成大学院プログラムとして知られていますが、その中でもLaw Schoolは群を抜いており、入学も勉強も卒業も非常にタフで競争が激しいといわれています。Law Schoolの大半は総合大学の一部として運営されていますが、Law Schoolのみの独立した教育機関もあります。アメリカ法曹協会(ABA: American Bar Association) 認定のLaw Schoolは全米に200校(2008年6月時点)あります。ABAは法律の専門分野認定団体でLaw Schoolを認定する機能をもち、後述するLawyerの資格にも関連してきます。Law SchoolはLawyer養成のJ.D.プログラムが主体で、さらに他のプログラム(LL.M, M.C.L., S.J.D./J.S.D.等)を持つところもあります。

一方、法律一般を大学学部レベルで人文・社会科学の一環としてコースを設ける大学もあります(Pre-Law program)。又、法律関係の職業人(例えばLawyerの助手など)を養成するプログラム (Paralegal Programs) は2年制・4年制大学や専門学校で見られます。最近は、仕事の需要が多いため人気が高まっています。

A. LL.M /M.C.L.(Master of Law)プログラム

Law Schoolの約半分(約100校)では、3年間のJ.D. プログラムの後、法学修士号が取得できるMaster of Laws (LL.M/M.C.L) プログラムを備えています。前述したように、外国人留学生が主にLaw School留学先として選ぶのが、このLL.Mプログラムです。LL.M.プログラムにはJ.D.プログラムを修了した者だけでなく、自国で法律の学位を持つ外国人留学生も多く在籍しています。特定の法律を勉強する他に、アメリカで弁護士資格を取る方法の1つとして認識されています。


コミュニケーション·スキル - 物理的なニーズ

LL.Mプログラムは通常1年間のコースで、基本的な法律とともに、税法、国際法、著作権法、環境法、農業法、日米比較法など、特定分野の法律を学ぶことが出来ます。授業の形式はJ.D.プログラムとほぼ変わらず、そのほとんどはJ.D.プログラムの学生と同じ授業を受講します。 LL.MプログラムのFields of Lawには以下のようなものがあります。

Fields of Law (LL.M)
Admiralty Law, Agriculture Law, Banking Law, Comparative Law, Criminal Law, Elder Law, Entertainment Law, Health Law, Human Rights Law, Insurance Law, International Law, Intellectual Property Law, Military Law, Mountain Law, Real Estate Law, Sports Law, Tax Law, Trade Law and etc.

M.C.L.プログラムは一部のLaw Schoolが外国人法律家のために備えている約1年間のコースで、アメリカ法や比較法を学びます。

B. J.D.プログラム

Law Schoolの主体はこのJ.D.プログラムです。ABA認定Law School 200校のなかでJ.D.プログラムを持つところは199校あります。(州によってはABAの認定はなく、州の認可のみのLaw Schoolがあります。ABA認定のないLaw SchoolからJ.D.を取得しても、後述するLawyerの資格の取得が困難になる場合がありますので、Law Schoolを選択する上で充分な注意が必要です。)

J.D.プログラムの教育期間は通常3年間で、修了するとJ.D. (Juris Doctor) の学位が与えられます (J.D.は通称、first professional degreeと呼ばれる)。入学には学部課程 (undergraduate program) を修了し、学士号 (B.A./B.S., Bachelor's Degree) を取得しておくことが必要です。その際、学部の専攻分野に特別な制限はありませんが、人文・社会科学を中心に幅広い教養が求められます。そのため学部課程で法科予備コース (Pre-law Program) を設けて、Law Schoolへの進学準備を行う大学もあります。しかしPre-law Program は、Law School入学に必須とはみなされていないのが実情です。 Law School入学に必要とされる資格・条件・適性能力は、上記をご覧下さい。

J.D.プログラムでは、法律のジェネラリストを養成するために、憲法、商法、民法、刑法、比較法、国際法等、法律全般を学ばせます。アメリカはCommon Law System(判例法システム)ですので、授業は判例を使った学習が行われています。実際の法令に基づいた教育法、ケースメソッドが取り入れられ、法律の専門家としてのLawyerを育てるために、Law School在籍中から、「Lawyerのように考え、意思決定する人」を訓練するために様々なアプローチが用いられています。 なかでも問答形式で授業を進めるソクラテス方式はよく知られています。プログラムの1年目はコアカリキュラムと呼ばれ必須科目で組まれています。必須科目の例としては、民事訴訟法、契約法、刑法、刑事訴訟法、財産法、不法行為法、リーガル・ライティングが挙げられます。2,3年目は選択科目が主体です。又、2,3年目には実際に学んだ法律の実習として、模擬裁判(Moot Court)や法律相談(clinic)の見学・実践などで単位を得ることが出来ます。課外活動としても様々な取り組みが見られます。

J.D.プログラムに加えて、多くのLaw Schoolは他分野の大学院プログラムと協力して、J.D.と修士号(MA, MBA, MPA 等)や博士号 (Ph. D.) が同時に取得出来るプログラム (joint degree program) を備えています。経営、行政、経済、都市計画、社会福祉、国際関係などの分野が一般的で、二つの学位を同時に取得し、別々に取得するより期間が短く済みます。

C. S.J.D./J.S.D. プログラム

S.J.D./J.S.D. プログラムは数が少なく(約30校)、プログラム自体も小規模です。法学博士号を取得するのが目的のこのプログラムは、法律を学問として研究する学者や法学教授になることを目指す者を対象にしています。J.D.もしくはLL.B.の学位と共に、LL.Mプログラムを修了することが求められます。S.J.D./J.S.D.プログラムは1年間のコース修了後、博士論文の提出が求められます。しかしアメリカでLaw Schoolの教授になる場合、必ずしもS.J.D./J.S.D.が必須条件になるわけではありません。むしろ高名なLaw SchoolでJ.D.を優秀な成績で修め、Lawyerとして実績のある方が法学教授として活躍する場合が多くみられます。

D. その他のプログラム

Law Schoolではありませんが、主として外国人法律家のための夏期(短期)プログラムもあります。これは主にSummer School Programsと呼ばれます。外国人留学生がLaw Schoolのプログラムに入学する前にオリエンテーションとして受講したり、外国人留学生だけでなくJ.D.の学生も夏期講座のみ単独で受講することもあります。主にアメリカの法律や法律制度を教えることを目的にしていますが、なかには英語研修も含めたものもあります。法律団体やLaw School、大学の英語研修所等が企画、運営しています。

 

●5. 日本人留学生が留意すべき点

上述の日米比較表でわかるように、日本からアメリカのLaw Schoolに留学する場合、法学士、または法務博士号を取得しているか法律家の資格があれば、J.D. プログラムでもMaster of Laws (LL.M /M.C.L.)プログラムでも、どちらにでも出願できます。

しかし3年間のJ.D.プログラムは、アメリカ法を中心にアメリカ国内のLawyerを育てることを目的にしますので、外国人留学生がJ.D.プログラムに入学するのは一般的ではありません。更に、J.D.プログラムへの入学は、非常に難易度・競争率が高く、入学後の勉学が熾烈です。J.D.を志す留学生は、アメリカ人学生と同等の優秀な学力と英語力を備え、アメリカ人学生と精神的に伍してやっていける資質が強く求められます。Law School留学を考える人は、苛烈な競争に耐えうるだけの強靭な心身の持ち主であるのか、前述したような条件や適性能力(リンク)を、自らが備えているのかを、客観的に鑑みる必要があるでしょう。

LL.Mプログラムへの入学ですが、日米比較表でわかるように、日本で法学士を取得していれば、J.D.プログラムを飛ばして、Master of Laws (LL.M /M.C.L.)プログラムに直接出願可能です。LL.M プログラムは基本的に1年のカリキュラムで、入学に関する競争率はJ.D.ほど熾烈ではなく、LSATも要求されず外国人留学生を多く受け入れています。しかし、LL.Mであっても出願者の能力が妥当だと評価されなければ、資格・条件を満たしているだけでは入学は許可されません。

法学での研究者を目指す場合、(特例ではありますが)、法律家の場合は司法研修所の研修プログラムをLL.M /M.C.L.プログラムとして評価してもらい、 S.J.D./J.S.D. プログラムに直接入れるように交渉することも可能なようです。


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A. 動機・目的 なぜLaw Schoolに留学したいのか?

下記は、LL.Mプログラムへの留学を想定したアドバイスです。

*あなたは日本の大学の法学部出身で法学士を取得していますか?
*現在までに職業経験が3年以上ありますか?それは法律関係の業務ですか?
*十分な英語力、学力、経済力(企業派遣を含む)、コアスキルを有していますか?
*留学後のキャリアについて、言葉で説明できますか?

上述の日米比較表でも述べたとおり、アメリカのLaw Schoolを志す方は、 日本での教育と比較して「何故アメリカのLaw Schoolに留学するのか」という留学の意義と将来展望を明確にすることが重要です。外国人留学生は自国でまず法律の勉強をし、法律家の資格を得ることが先決ともいわれます。

留学は誰に対してもオープンに開かれていますが、Professional Schoolへの留学・特にLaw Schoolへの留学は、まとまった時間とお金と労力を掛ける覚悟が必要です。従って、「視野を広げたい、英語力をつけたい」等の一般的な留学動機より更に具体的・明確な志望動機や本人のキャリア目的が要求されます。Law School留学を志す方は、まず上記の質問に答えてみて、今の自分には十分な準備が出来ているのか、現時点で、資金と時間をかけるだけの明確な志望動機と説得力を備えているのかを、振り返ってみてください。

母国で法律家になった上で更に特定分野で専門を深めたいならばLL.Mプログラムへ、
母国で法律家・または法律分野で勤務し、更にアメリカの国内法体系を理解しアメリカのLawyerと同等の知識・資格取得を目的とするならばJ.D.プログラムへ、
など個人の目的に応じて留学の選択肢が分かれてくるでしょう。

B. 大学選択(Law Schoolを選ぶとき)

大学選択を考えるとき、かけた投資・労力に見合う結果をと考え、思わずランキングで選んでしまうことはよくあることかもしれません。しかし、アメリカの大学は日本の様な偏差値という指標を用いず、全て書類審査で入学合否が決まりますので、大学の価値を日本的ランキングだけで計ることはできません。知名度を全く度外視することは現実的ではありませんが、著名度だけで選ぶとミスマッチを生む原因にもなりかねません。(「アメリカ留学の基礎知識(経営大学院)」の学校選択の方法参照。)「アメリカ留学の基礎知識-大学・大学院」の大学選択のページ・ワークシートを参考に、ご自分の現状と希望がマッチするような大学選択シートを作成してください。

※ Law Schoolのランキングは専門雑誌等で定期的に発表されていますが、ランキングを見る時はそのランキングの審査基準を調べる必要があります。一般にはLaw School入学者のGPA(大学成績平均点)や LSAT (Law School入学適性テスト)のスコア等で入学難易度を調べ参考にすることが多いようです。全米レベルで知名度の高いLaw Schoolはそのような要素や歴史、業績でいわゆる有名校と認識されています。

C. 出願条件 (学力、英語力、経済力、その他の能力)

外国人留学生がMaster of Lawsプログラムに入学を希望する場合は、J.D.と異なりLSATを受ける必要はなく、要求されているのは、法学士号、最終学歴のGPA、本人のエッセイ、推薦状、TOEFLスコア(一般にiBT 100点、CBT 250点、PBT 600点以上)、職務経験上の実績(*下記参照)、コアスキル、などです。

*職務経験:LL.Mの場合は、一般的に法律分野での職歴や経歴を求められます。(J.D.プログラムの場合は、法律分野に限りません。)法律家の資格がなくても法学士、法務博士を持ち、ある程度法律分野で仕事の経験がある方が有利になります。 (「アメリカ留学の基礎知識(経営大学院)」留学の資格と条件参照。)

D. 出願準備・時期

一般のアメリカ大学院留学と同様、出願時期は前年の10月末〜翌年の4月くらいまでとするところが多いでしょう。ただ各Law School毎に締切が異なりますので、個別に調べる必要があります。各プログラムの指定する締切までに必要書類を指定されたやり方で送付する必要があります。必ず各大学のサイトを見てその指示に従って下さい。 なるべく早くから準備を進め、締切を待たずに早めに出願しましょう。

LSAT試験を統括しているLSACという団体では、LL.M.留学を希望する外国人留学生向けに、"LL.M. Credential Assembly Service"($185、2008年時点)を行っています。これは、LSACが出願者の出願書類(大学・司法研究所の成績、TOEFLスコアなど)を一つのレポートにまとめ、希望するLL.M.プログラム(5校)に本人の代りに送ってくれるという有料のサービスです。サービス利用者は、自分のファイルに24時間アクセス出来、今どのLaw Schoolに出願書類が送られたかということを自分でモニターできます。 詳細は、LSACのサイトをご覧下さい。

その他出願について詳しくは「アメリカ留学の基礎知識−大学・大学院(またはアメリカ留学公式ガイドブック)」を参照して下さい。

E. 留学後の進路・キャリア

日本からアメリカのLaw Schoolに留学する人々には、一般的に次のようなタイプが見られます。

A.企業・政府派遣型 ― 会社の法務部等で貿易法、労働法、税法など法律に関する業務にたずさわっている社員を社員研修の一部としてアメリカのLaw Schoolに留学させる。法律事務所から弁護士、司法研修所からは研修生を派遣したり、国家公務員の留学制度で裁判官や検察官を留学させることもある。

B.奨学生型 ― フルブライト奨学金等でLaw Schoolに留学する。主に法学の学者や教授を目指す ものが多い。

C.私費留学型 ― 個人が自費でLaw Schoolに留学する。

いずれの場合も本人の目的に合ったプログラム(主にLL.M)に入学するわけですが、留学後の進路・キャリアの選択肢として以下が挙げられるでしょう。

1 ) LL.M.プログラム修了後に、Bar Examを受けてアメリカのLawyerの資格を取る。(LL.Mの資格でBar Examを受けられる州を探し、その州のBar Examを受ける。)

2) 学生(F-1)ビザのステイタスで、OPT (Optional Practical Training)*を申請し、就労・研修先を見つけて12ヶ月までアメリカ国内で就労・研修する。(*OPT: F-1のvisaを持つ学生が学位取得後、12ヶ月を上限として働くことができるというもので、職種は専攻分野と関連している必要あり。J.D./LL.Mプログラムを修了した者は、法律事務所などの法律に関連した場所でのみ就労が可能。就労・研修先は自分で見つける必要あり。)


3) LL.M.修了後にJ.D. プログラムに進学しアメリカの司法試験を受けて、Lawyerの免許をめざす。
注意:たとえJ.D.を取得し、希望する州の司法試験に合格できても、アメリカでLawyerとして 活動出来るかどうかは州法や米国市民・移民局(Bureau of Citizenship and Immigration Services)の規則を調べなければなりません。 日本では外国の法律家免許では一部のケース(*)を除いては就業出来ませんので充分な注意が必要です。それから日米の法律に関わる社会の違い、法律家の需要や社会的地位の違いなども考えておかなければなりません。又、前述したように外国人が働くには労働(H-1)ビザが必要です。
(*)外国の法律家免許を持っている者は免許を得た国または州で3年以上の実務経験があり、法務省が資格承認をした場合に限っては、 日本弁護士連合会で外国法事務弁護士として登録し、職務につくことが出来る。2008年時点で267名である。

4) アメリカ国内で開催される日経企業のキャリアフェア・キャリアフォーラムなどに参加して、就職活動を行う。または日本に帰国してから就職活動を行う。(FAQ9留学後の就職)

5) アメリカ国内で就職し、労働(H-1)ビザを申請して働く。(注意:労働(H-1)ビザ申請は非常に狭き門であり、アメリカ国内での就職は困難といわれる。(FAQ9留学後の就職)

●6. LLM以外のプログラムへの留学

A. J.D.プログラムへの留学

J.D.プログラムへの入学は一般的ではありませんが、実際に実行する方もいますし、将来への可能性に挑戦する場合もあります。

J.D.プログラムへの出願には上記の出願条件以外にLSAT (Law School Admission Test) のスコアが求められます。LSATは法学関係分野の学習適性を計るテストで年4回(*日本では6、10、12月の計三回実施)、日本を含む世界各地で実施されています。半日のテストで、読解力、分析力、論理力、記述力などが含まれ、記述力以外は多肢選択形式によるものです。スコアは120〜180の間で表され、150が中間点とみられます。LSATはLaw Schoolでやっていける能力や技術を測るテストです。多量で複雑な内容の読書量を正確に、洞察力をもってこなす能力、情報を収集し整理する能力、論理的に批判できる能力、他者の論理や議論を分析したり、評価できる能力等が求められます。つまりLSATはLaw Schoolが求める読解力や論理力を評価するものです。

J.D.プログラムへの入学審査には、LSAT、出願条件(リンク)以外では、専攻分野や大学にみられる出身の多様性、就職経験、課外活動、個性、業績等が審査対象とされます。出願者のLSATのスコアとGPAを基にした入学状況データを発表しているLaw Schoolもあります(参考図書"ABA-LSAC Official Guide to ABA-Approved Law Schools" 参照)。Law SchoolではLSATの他にLSACが行っているLSDAS(Law School Data Assembly Service) を要求することがあります。LSDAS はLaw School受験者についてのリポートで、LSATのスコア、学歴、大学の成績証明書などが含まれます。リポートは出願校すべてに送られますので、個々のLaw Schoolに提出書類を送付する必要はありません。 LSAT 願書(LSDASを含める)の詳細・受験申込は、Law School Admission Councilをご覧下さい。

B.S.J.D./J.S.D.プログラムへの留学

法学博士課程(S.J.D./J.S.D.プログラム)に入学するには法学修士号(LL.M/M.C.L.)を取得していなければなりません。日米比較表にあるように、Law Schoolによっては日本の法律家は1年の司法研修所での研修が認められて、S.J.D./J.S.D. プログラムに直接入学出来ることもあります。S.J.D./J.S.D.プログラムは数が非常に少ない為、入学の競争率も大変厳しいものがあります。又、法学教授の養成を目的にしますので、法律を学問として研究する場になります。

●7. ロースクールに関する情報源

フルブライト・ジャパンの資料室では、アメリカの各ロースクールのオンラインカタログや参考図書が閲覧できます。図書の閲覧は資料室内に限ります。(資料室の利用時間) 
また「アメリカ留学の基礎知識−大学・大学院」(またはアメリカ留学公式ガイドブック)もご利用ください。

A. 参考図書

B. インターネットによる情報収集
以下のリンクは、日米教育委員会が内容を保証したり、サービスを推薦するものではありません。情報のご利用は自己責任になりますので、予めご了承下さい。

American Bar Association (ABA)
American Bar Association (ABA) Law Students
Association of American Law Schools
Law School Admission Council (LSAC)
American Society of International Law
National Conference of Bar Examiners
LLM Guide
Council on Legal Opportunity (CLEO)
Jurist
National Association for Law Placement (NALP)
Pre-law Handbook
Pre-law page of the Internet Legal Resource Guide
Pre-law page of Hieros Gamos
State Bar Associations
- New York State Board of Law Examiners
- The State Bar of California

*参考文献:
ABA・LSAC Official Guide to ABA-Approved Law Schools, LSAC(Law School Admission Council), Inc. and ABA(American Bar Association)
Barron's Guide to Law Schools, Barron's Educational Series, 2008
U.S. Department of State EducationUSA Connections Journal "Vol. 3, Issue 2: Legal Education in the USA "

日米教育委員会・留学情報サービスでは、2008年7月に開催致しましたスペシャルセッション「American Legal Education - Do you want to Study Law in the U.S. ?」(講師:Professor George E. Edwards, Indiana University School of Law, Indianapolis)の内容も参考にさせて頂きました。なお、このセミナーのDVDは、希望者に貸し出しておりますのでご利用ください。(詳細)

このサイト作成にあたりご協力頂きましたIndiana University School of Law, IndianapolisのProfessor George E. Edwards、松尾香織様、またその他にもご協力頂きました皆様に深くお礼申し上げます。

(Updated November, 2008 禁無断転載)



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